日本の森林を想う3

                       ひのゆうさく

 林野庁の進める原野商法まがいの「緑のオーナー制度元本割れ」がニュースをにぎわしています。根本的な森林対策もせず、他力本願で国民からお金を巻き上げ、あげくに木材価格が下落することを考えていなかったという、林野庁の考えの無さにはあきれて物も言えません。しかし、緑のオーナー制度で損をした人以上に、自然は大きなダメージを受けています。結局、この国の森林は政治家と権力者の食い物にされ、官僚の無能さによって崩壊していると言っても過言ではないでしょう。
 そして、各地で発生する深刻な獣害。木頭でも、イノシシ、鹿、猿などによる作物への被害は深刻です。彼らとて、森林政策の被害者であり、生きるために必死なのです。無駄な林道やダムによって破壊された自然は、動植物の生態系を破壊し、やがて人間にも被害が及ぶのは明白です。それが、農業に対する獣害であり、漁業に対する資源の枯渇につながっています。さらには、コンクリートの道路や壁による自然の循環系の破壊は、土の中に深刻な影響を与えています。

 本来なら地下へ浸透する水が、道路やダムによって遮蔽された空間のために流れを変え、表土を流し泥水となって土の表面の微細な穴をつまらせ、土壌微生物の生息環境までも破壊するというのです。そのことで、植物の根が腐り、木が弱り、森林全体が病気になってしまうのです。全国各地で起こる森林の立ち枯れの原因について林野庁は酸性雨や害虫のせいではないかと口を濁していますが、根本的には、無謀な開発によって自然の循環系が破壊された結果であることは明白です。そんな弱った森林に、酸性雨や害虫がさらに追い討ちをかけた結果がいたるところで目にする木々の立ち枯れ現象なのです。

 それに対して、ヨーロッパの環境先進国では、自然の循環系を守るための対策が積極的に取られています。道路を雨水が浸透するように作り直したり、虫や小動物が往来できるようなトンネルを道路の下に設けたり、河川のコンクリート三面張りを壊して、川の水が周辺の土壌と循環できるような近自然工法に改めたり、ダム開発を中止して森林の植生によって保水力を高めたり、さらには農薬や化学肥料の使用を規制し、自然循環型の農業に対して補助を出したりなど、微生物から人間の行動も含め、森林を保全するための対策は日本の無策に比べうらやましい限りです。森林行政に携わる日本の政治家と官僚よ、いったいあなたたちは何をしているのですか?

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