笑顔のちから

                 ひの ゆうさく

 社会不安をあおるニュースほど視聴率や購読者が増えるという法則
に乗じて、マスコミはことさら危機的状況を強調する毎日。そのくせ、
あいもかわらずコマーシャルは氾濫し、現実は危機感などどこ吹く風
という感じです。もはや危機感も、バーチャルなエンターテイメント
のひとつなのでしょう。人の不幸は蜜の味ということわざがあります
が、なんだか嫌な話です。世の中にはもっと伝えなくてはいけない情
報があるはずなのに、公共情報機関であるマスメディアはその責務を
忘れて、くだらない情報を垂れ流し、人々の心をもてあそんでいるよ
うに思えます。
 そんなマスコミに振り回されることなく過ごすには、心の鎖国が必
要ではないでしょうか。テレビを見ず、新聞や雑誌を読まず、心健や
かに日々の暮らしを大切にし、感謝の気持ちを忘れなければ、ストレ
スなどたまることもないと思います。そして、いつも笑顔を忘れない
ことも大切でしょう。予防医学において、たとえそれが作り笑いだと
しても、笑顔でいるだけで免疫力が増すことが証明されています。
また、末期がんの治療においても、薬よりも笑いのほうが延命に大き
く貢献するといわれており、実際に治療の一環として落語や漫才を取
り入れるホスピスも少なくありません。つまり、病は気から、健康は
笑顔から、ということでしょうか。
 ただ、テレビで放映されるお笑いには、どうかと思うものも少なく
ありません。人を馬鹿にし傷つけて笑いを取るという手法は、結局人
の不幸を笑っているようなもの。それもストレス発散だという人もい
ますが、その場限りの笑いでは、心は癒されないと思います。お笑い
に高級、低級はないかもしれませんが、やはり心温まるお笑いが、心
豊かにしてくれるのではないでしょうか。例えば子供たちの笑顔につ
られて、自然に笑みがこぼれるといったナチュラルな感覚は、とても
素敵な笑いだと思います。
 話は変わりますが、心と体のリラクゼーションに有効だといわれる
瞑想においても、笑顔が重要だといわれています。頬に少しの笑みを
浮かべることで、よりいっそうの効果が得られるとか。そういえば、
仏像や観音菩薩像を良く見ると、ほんの少し笑みを浮かべています。
きっとそれは、人が心安らかにあるべき姿の象徴なのではないでしょ
うか。