東洋町の核廃問題について  

       高知県東洋町  原田英祐

1. 高レベル放射性廃棄物最終処分とは

 原子力発電は「トイレなきマンション」と言われ、核物質を燃やして発電して、そのあと
に残る核廃棄物の最終処分が未解決。核廃処分の立地調査をするだけで年間10億円の交付金
が出るという「核廃最終処分法」があり、市町村長がNUMO(原子力発電環境整備機構)に、立
地調査を応募することができます。
 国が認可したら、住民・議会・知事が反対しても6年間は調査が強行され、毎年10億円程
度の交付金(原子カマネー)が出ます。この金は反対住民を届服させる軍資金。細川内ダム問
題で木頭の方々はお察しできると思います。

2. 東洋町の核廃問題

 東洋町では、平成18年3月に町長が秘密裏に応募。しかし、「住民や議会の同意を得てい
ない」との理由で一旦応募書は返されるものの「核廃受け入れを前提とした」町長(国、
NUMO)の呼びかけの勉強会などを重ね、計画は着々と進行。
 やがて住民やサーファーから反対の声があがりはじめ、署名運動もはじまり住民の69%が
反対署名して請願書を提出。全国サーファーも4千人余の反対署名を町長と議会に提出。方
々で反対集会や学習会なども開かれ、日に日に住民パワーがアップしていきました。住民パ
ワーこそ勝利の原動力でした。県や周辺市町村はもとより、全国的にも反対の声が圧倒的で
マスコミ関係も表面は中立報道と言いながら、核廃反対の報道に尽力。とくに原子力発電所
事故隠しなどが次々と報道されました。核廃応募推進派は、東洋町長と4名の町会議員と一
部住民で「百年後に放射能は自然消減。活断層はなく地層は安全」など、非常識な見解を発
表。町長は安全性などまったく考えず、頭の中は交付金で満杯。議会は反対派6対推進派4で
町長辞職勧告、核廃持込禁止条例制定など、あらゆる手段を講じました。国の態度は一転し
て「核廃最終処分法は、町長の意志のみで概要調査まで進めることになっている。住民や議
会や県知事の反対など受け付けない」と、国会答弁でもひらきなおりました。
 こうなれば町長をやめさせ、核廃反対の町長を当選させるしかありません。その頃から、
おもな反対派には殺人予告のような脅迫電話もある中、沢山氏(現町長)を擁立。圧倒的な
リコール署名が集まり始めると、町長は、リコール前に辞職(4月5日)し、町長選挙に突入。

3 反対運動の結果とその後

 反対派沢山保太郎氏が70%の得票で圧倒的に勝利しました。当選の翌日すぐに国に対して
調査申止と自紙撤回を求めると、国側は約束どおり、あっさりと東洋町からの撤退を決めま
した。5月20日臨時議会でr東洋町放射性核物質の持ち込み拒否に関する条例」が全会一致で
可決成立、東洋町の核廃騒動がここに終止符をうったのです。
 しかしながら、国政では「今後は自治体から応募を待つだけでなく、候補地を国が選定す
る方法も検討する」としています。高知県では先日、中谷白民党衆議員(もと防衛庁長官)の
父親ら数名が核廃誘致のNPO団体設立の申請を出していることなど、余談をゆるしません。
 まだ町政が安定したとは言えませんが、過渡的な現象だと私は判断しています。豊かな自
然や歴史・文化を活用し、産業振興のための公杜たちあげや、産直販売所「白浜海の駅」開設
などが準備段階です。

4. おわりに

 私は定年前に農水省関連を退職して故郷の東洋町へ帰り、現在は町会議員をはじめ神杜や
寺の総代その他、各種地域活動をやっています。公務員時代には労組役貝もやり、国との喧
嘩は経験ずみ。藤田恵氏の著書などで細川内ダム反対運動をお手本に、国会県会議員、知事
周辺市町村、マスコミ、反核団体などに情報を発信して対応。沢山氏らとともに上京し、日
弁連への支援要請、経産省でのひざ詰め談判も行ないました。町議会では、国の発行した
「原子力白書」「原子力安全白書」から原子力行政や核廃処分の問題点などをとりあげ、町
長やNUMOや国を追求。高レベル廃棄物に隣接して低レベル廃棄物も埋めるという国のマル秘
方針も暴露。いったん高レベルを受け入れると、低レベルなども受け入れさせられる恐れあ
り。「調査だけOKして数十億円いただき、途中で中止させたらよい」という甘い考えはダメ
そんな美味しい話なら全国方々の自冶体が応募しているはず。正式応募は東洋町だけなので
す。反対するなら徹底的に反対すべし。世界的に深地層処分は問題ありとして他の方法が模
索されています。けっして安心・安全なものではありません。現時点では地中深く埋めず、
地上もしくは半地下に保管施設を作り、手の届く範囲内で注意深く監視していくことが最善
策。

 東洋町の核廃騒動は、さいわいにも約1年で終結。住民パワーと日本全国の世論が、法律
をも撃破し、金よりも大切なものを再認識させました。    

 *ページの都合上、元の原稿を要約させて頂きました。全文はこちらにてご覧になれます。