木頭を訪れる理由  

       拓殖大学北海道短期大学 保育科助教     淀野 順子

 *「わぁ木頭村って村の空気が全部柚子だ!」はじめて木頭を訪れたとき、車を降りた瞬間に全身を柚子の香りで包まれ、感動したことが昨日のように思い出されます。*

*10**年前、はじめて木頭を訪れたのは、ダム建設計画に何十年も反対し続ける「強さ」が何から生まれているのかを知りたいと思ったからでした。*
*「よぅ来たのぅ」とぽっかぽかの笑顔で迎え入れてくれるババたち「そういえばそんなこともあったのぅ」と、ものすごいことをなにげなく話すシたち。手づくりの木頭茶や野菜をいただきながら、シやババから話を聞くうちに、じんわりとした感動を覚え、そのなかで「強さ」が何から生まれているのかが少しずつ分かってきたような気がします。*

*木が成長するはやさで考え、自然の流れの中でつくり、語らい、楽しみ、時には猿と知恵比べをする。そんな暮らしだからこそ、木頭の人たちは強くてあたたかいんだろうなぁ と。*
*木頭を知るにつれ、木頭を訪れる理由は「近づきたい」に変わってきました。強くてあたたかいシやババたちのような人に私も近づきたい!だから同じようなものをつくり、食べ、暮らしたい!*

*木頭を訪れるまで、柚子を食べたことがなかった道産子の私ですが少しずつ木頭の暮らしを真似するうちに、寿司も酢のものも柚子酢でつくらなければ物足りなくなりました。ときどきムショーにそば米のお汁を食べたくなるし、冬には干し柿が気になるようになりました。テレビや新聞では、徳島や高知の天気やニュースをチェックします。

*木頭のシやババたちのように強くてあたたかい人に近づくために、今日も私は、木頭茶や柚子やお菓子を食べながら、シやババたちの笑顔を思い出し、次に木頭を訪れることを想像しつつ仕事に励みます。

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